研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 高等学院 | 教諭 | 森下 壽典 |
- 研究成果概要
本研究課題は、これまで実施してきた文化資源に関する研究を歴史教育・授業開発へと具体的に結びつける準備の一環と位置づけられる。研究費は、主に基礎的な情報を取得し、記録するために使用した。
とくに、来年度から高等学院において総合的な探究の時間の枠組みとして始まる「考古学と物質文化論・文化資源論」に向けて、授業展開の基盤となる基礎的な研究を進めた。この授業は、私たちの日常を取り囲む無数のモノ(≒物質文化)をキーワードに、考古学的手法やアフォーダンス理論を含めて人間とモノの相互関係について様々に考えるとともに、「資源化」というプロセスに注目しながら、様々なモノやコトが(ときにはニセモノや伝説・神話まで)資源として利用される現状について、諸事例を紹介しながら検討するものである。
一方、本年度は、インカ帝国に関する書籍を英訳する仕事に関係したこともあり、インカ研究における考古資料と文献資料との関係についても、授業開発につなげるという観点から再検討した。資源化とは対象を利用可能な価値があるものとして意味づけていくプロセスに他ならないが、スペイン人征服者たちが記述したクロニカに学術的な価値を見いだし、それらを主たる資料としてインカ帝国のイメージを形成し、またアカデミックな世界でそれが再生産されていくプロセスと、物質文化である考古資料による検証・修正のプロセスは、「考古学と物質文化論・文化資源論」を構成していく上で示唆に富むものでもあった。すなわち、これまでも主張してきたように、こうした学術研究がすすむプロセスを資料提示によって生徒に追体験させることが、歴史教育において批判的思考力を養うために有用であると考える。
本年度の研究成果を踏まえて、来年度以降授業を実践し、その成果をふまえて不断の再検証をおこなっていく。