表題番号:2023C-251 日付:2024/04/02
研究課題多変数ジーゲルーヒルベルト保型形式を特徴付けるフーリエ係数の数論的性質の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 坂田 裕
(連携研究者) 埼玉大学 名誉教授 小嶋 久祉
研究成果概要
微分幾何学や理論物理学等で重要な役割を果たす多変数ジーゲル保型形式の構造と,(岩澤理論等の)代数体上の整数論を展開する上で重要な役割を果たすヒルベルト保型形式の構造を併せ持つ多変数ジーゲル-ヒルベルト保型形式のフーリエ係数の数論的性質に関する分析を行った.最初に,ジャケット-ザギヤの跡公式をベースに構成されたザギヤ・ワルドプルジェの理論を狭義類数1の総実代数体上のヒルベルト尖点形式の場合に拡張し,代数体上の保型形式のヘッケ理論とアトキン・レーナー理論およびジーゲルの主定理を組み合わせることで,ある条件を満たす任意レベルでパラレルウエイトを持つヒルベルト尖点形式をこの代数体上の二次形式に付随する球関数付きテータ関数の線形結合で表わした.証明の鍵は,ヒルベルト尖点形式を生成するヒルベルト尖点新形式をあるディリクレ級数を用いて具体的に構成し,(そのディリクレ級数のオイラー積を二次形式の局所密度の積で書き直すことで) ヒルベルト尖点新形式のフーリエ係数をテータ関数のフーリエ係数で直接表わすところにある(この成果は現在投稿中).この成果により,ヒルベルト尖点形式のフーリエ係数は二次形式(の同値類の代表系)を用いて具体的に記述することが出来る様になったため,その数論的性質もある程度明示的に表わすことが出来る様になったと思われる.
次に,この結果を参考にして多変数ジーゲル-ヒルベルト保型形式のフーリエ係数の数論的性質を調べた.多変数ジーゲル-ヒルベルト尖点形式を直接テータ関数の線形結合で表わす基底問題は,プルバック公式や微分作用素理論等を用いた研究が一部で進められているものの,全体解明には未だ大きな壁が幾つも残されている.そこで,ここでは多変数ジーゲル保型形式を特徴付けるフーリエ係数の数論的性質を多変数ジーゲル-ヒルベルト保型形式の場合に一般化することに取り組んだ.