表題番号:2023C-249
日付:2023/10/04
研究課題音声教育に対する中国の日本語教師の認識
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 国際学術院 大学院日本語教育研究科 | 助教 | 劉 羅麟 |
- 研究成果概要
- 本研究では、先行研究を踏まえたうえで、中国の36の大学に所属する99名(本報告の時点まで)の日本語教師を対象にアンケート調査を行った。具体的には、まず、日本語教師の音声教育観と指導実態に関する先行研究を概観し、その調査結果を整理した。各研究の調査における質問項目を比較することにより、音声教育のための「理念・経験・感想モデル」を構築した。次に、上記のモデルに基づき、アンケートの質問項目や具体的な文言を精査した。スノーボールサンプリングで調査協力者を募い、アンケート調査を行った。その結果を分析し、中国の高等教育機関における日本語教師の指導実態と音声教育観を明らかにした。指導実態に関しては、①体系性や科目などの違いがあるものの、調査協力者は全員発音指導を行っている(特に大学一年の入門期)。②最も指導されているのはアクセントであり、ポーズとプロミネンスに関しては指導があまり行われていない。③母語の活用を含む多様な指導方法やリソースが用いられているが、記号などの視覚的補助やジェスチャーなどの運動型補助が少ない。④半数以上の教師は大学・大学院で音声学や発音指導に関する知識を得た。音声教育観に関しては、①全ての教師が発音指導が必要、もしくは非常に必要と考えている。半数以上が発音を文法や語彙以上に重要だと考えている。②音声教育の目標として、正確または自然な発音の習得だと考える教師が最も多い。ほかには、知識や規則の理解、音声に関する意識化の促進、コミュニケーションにおける問題の減少があった。③大学一年だけでなく、二年ないしそれ以上の段階における発言指導が必要だと考える教師が多い。適任な指導者としては学習者と母語が同じの、非日本語母語話者教師という意見が最も多い。本研究の成果を11月に香港の国際シンポジウムで発表する予定である。また、国内外の学術誌に研究論文を3本投稿する予定である。