研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 国際学術院 大学院アジア太平洋研究科 | 教授 | 篠原 初枝 |
(連携研究者) | アジア太平洋研究科 | 教授 | 篠原初枝 |
- 研究成果概要
国際連盟が第二次世界大戦中にいかなる活動をおこない、それがどのように国際連合に継承されていったかを課題として研究した。まずは、2次資料の検討では、連盟が戦争中に、アメリカのプリンストン、ロンドンなどに分かれて統計収集などをしていることがわかった。
2月にイギリス、ロンドンのThe National Archives での資料収集によって、1939年秋、ヨーロッパでの戦争勃発後、今後の連盟をどうするかについての議論が、参加可能な加盟国によってなされていることがわかった。それによれば、連盟は、集団安全保障が機能しなかったことで、今後は「ブルース報告」で提起されていたように、むしろ、社会経済問題に中心をすえて活動を行うべきだという議論が多かった。ただし、ヨーロッパでの議論は、戦争の激化によって中断されたようである。
その後、国際連合の設立をめぐって、アメリカのリーダーシップのもとに国連設立構想が進んでいくなかで、イギリス外務省を中心として、国際連盟の専門機関を継承する形で国際連合構想をしていることが下記の文書でわかった。
“Report of the Committee on the Future of the League of Nations” 15th March, 1945
この文書によれば、国際連盟期に実績を積み重ねた、「事務局」、「保健衛生活動」、「難民問題専門機関」は戦後の国際連合に継承されるべきであると議論されていた。国際連合で新たにこれらの活動を立ち上げることには労力がかかり、人的資源の継承という点でも、連盟の実績を国連につなげるべきだという議論がされていた。この文書からは、国際連盟の社会経済面での活動を国際連合につなげる役割を果たしたのは、イギリス外務省であることが推察された。すなわち、国連安全保障理事会という安全保障の大きな枠組はアメリカ側から提起されたものである一方で、連盟時代の実務を評価し国連の制度につなげたのはイギリス外務省という役割分担があったと推察される。