表題番号:2023C-227 日付:2024/04/05
研究課題大規模スポーツイベントが開催地住民のスポーツ活動に与える影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 教授 松岡 宏高
(連携研究者) Nanyang Technological University Assistant Professor Keita Kinoshita
研究成果概要

本研究は、スポーツイベントの開催への人々の関わりが、媒介変数や調整変数との関連も含めて、どのようにその人々の長期的・継続的なスポーツ実施に影響を与えるのかについて解明することを試みるという科研費による研究プロジェクト(「スポーツイベントの開催が人々のスポーツ参加に与える影響の検討」)を補助する意図で取り組み始めたものである。しかしながら、大会スポンサー関連のスキャンダルが長期にわたり報道され、オリンピックに関連する質問紙調査を実施するには適した社会的状況ではなくなった。そこで、2021年度に東京オリンピックの前後において日本国内住民より収集した3ウェーブのパネルデータを再分析し、論文としてまとめる作業を行った。研究の概要は以下の通りである。

本研究では、1)オリンピックの前後におけるスポーツイベントのポジティブおよびネガティブな社会的効果と住民の幸福感(eudaimonic well-being)の変化、および2)その社会的効果が幸福感とどのように関連しているかについての検証を試みた。分析においては、イベントの社会的効果と幸福感の個人内の変化および個人内の関係に着目した。分析の結果、イベントのネガティブな社会的効果のみが大会後に有意に変化することが示され、大会前のポジティブな社会的効果は、イベント直後の幸福感と有意に関連していることが明らかとなった。また、大会直後の幸福感は、大会から2ヵ月後のポジティブな社会的効果と有意に関連していた。この結果は、イベントによるポジティブな効果は住民の幸福感に一時的に影響を与えるだけでなく、及ぼす影響は、時間的なものだけでなく、その影響を受けたイベント直後の幸福感が2ヵ月後におけるイベントに対するポジティブな評価に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。