表題番号:2023C-226 日付:2024/02/05
研究課題人のネットワークの定量化と内的・外的要因の相互影響分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 教授 広瀬 統一
研究成果概要
本研究は人の協調状態を定量化する手法の確立と、協調状態の相互影響要因を身体内・身体外の二要因から明らかにすることを目的とした。女子サッカー選手を対象として、サッカーの試合中の協調状態の相互影響のうち、外的なイベントが協調状態に及ぼす影響について検討した。まず、試合中の協調状態を、2人および3人のつながりを構成する人の変化を「多様性」、つながりの量の多さを「活性度」として評価する指標を確立した。その上で、チーム(組織)としての成熟度を大学女子サッカーチームと女子プロサッカーチームの2群に大別し、各群の公式戦として大学生女子サッカーチームは6試合、女子プロサッカーチームは8試合における協調状態の多様性と活性度を比較検討した。次に、試合中に生じる外的なイベントとして相手チームあるいは自チームの選手交代、自チームの得点および失点の4つを抽出し、その前後5分間におけるつながりの多様性と活性度を、女子プロサッカーチームを対象に比較し、これらの外的イベントが協調状態に及ぼす影響について検討した。その結果、大学生女子サッカーチーム(2人:0.13AU vs. 0.24AU、3人:0.25AU vs. 0.333AU; p<0.05)および女子プロサッカーチーム(0.10AU vs. 0.41AU、0.21AU vs. 0.44AU; p<0.05)ともに、試合の前半よりも後半の方が2人・3人のつながりともに多様度が低下する、すなわち一定のメンバーがつながりを形成するという特徴が示された。しかし、多様性の低下度は女子プロサッカーチームの方が大きく、より固定化された協調状態が形成されることが示された。一方で、両群ともに試合後半の協調状態の活性度は前半よりも低値を示した。この傾向は女子プロサッカーチームで強く示された。このことは、女子プロサッカーチームは前半と後半の間のハーフタイムを通じて、固定化された協調状態で活性度が低い、すなわち一定の協調状態をつくりながら試合の勝利、すなわち攻撃と守備を行っているという成熟した戦略運用状態を示すものと推察された。また、試合中に生じる各種イベントにおいて、その前後の協調状態に最も影響し得るものは失点であり、失点後には3人のつながりの活性度が低下することが示された。