表題番号:2023C-218 日付:2024/04/03
研究課題音響・音楽刺激に対する瞳孔反応とエラー関連電位の測定と評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 准教授 百瀬 桂子
研究成果概要

楽曲を聴いているときに無意識に知覚される意外性や覚醒の程度を,瞳孔拡張反応(PDR)と事象関連電位(ERP)により評価することを試みた.大学生17名を対象として,楽曲のサビ部分を含む12秒程度のメロディを約60曲聴取してもらい,その間の瞳孔径変動と頭部29箇所の脳波を記録した.楽曲の約半数は,その後半にピッチを高くした逸脱音を含めた.1曲の聴取が終わるごとに,メロディに対する親近度(聞き馴染みの程度)と予測性(どの程度予測しながら聴いたか)を5段階評価と,逸脱音の有無の回答を求めた.評定値を基に,各メロディを親近度高群と低群,予測性高群と低群に分類した.逸脱音提示前後の瞳孔径変動と脳波を抽出し,メロディ群ごとのPDRとERPを抽出した.親近度と予測性の評定値には正の相関が見られた.親近度・予測性の高・低群間で,PDRに統計的な有意差は見られなかった一方で,ERPは頭頂部の潜時250-400 msの平均電位は親近度・予測性の高群は低群と比べ有意に増大していた.この結果から,皮質下処理に関わる瞳孔変動には,メロディへの親近度・予測性の程度にかかわらず,逸脱反応が出現し,親近度・予測性の違いは皮質応答である脳波に反映されることが確認された.