表題番号:2023C-214 日付:2024/04/05
研究課題腸管上皮細胞由来のエクソソームを介した細胞間相互作用の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 助教 矢野 敏史
研究成果概要
エクソソームは、生理的条件に応答して様々な細胞から分泌される脂質二重膜の細胞外小胞である。エクソソーム内部には、miRNAやmRNAなどの核酸やタンパク質等の細胞内成分が含まれており、細胞間コミュニケーションの情報分子として多くの生命現象に機能すると考えられている。腸は外部環境からの刺激に直接さらされる器官であることから、腸細胞由来のエクソソームが腸内環境や生体内の恒常性維持に働くことが想定されている。また、摂取した食品成分が腸細胞からのエクソソーム放出に何らかの影響を与える可能性が考えられるが、その内包成分や送達される細胞での生物学的機能への影響については多くが明らかにされていない。そこで本研究では、腸細胞由来のエクソソームの内包成分の機能をプロファイリングし、刺激によるエクソソームの機能性変動と標的細胞内のシグナル伝達に与える影響について解析することを目的とした。まず、腸管上皮細胞由来のエクソソームを精製し、その内容成分を分析した。その結果、エクソソーム内には、数百種類の細胞内成分が特に濃縮されていることが示された。そこで、エクソソーム内成分の生物学的機能をプロファイリングにより解析したところ、先行研究で機能が想定されていた免疫に関連する成分が、特に濃縮されていることが明らかとなった。さらに、食品成分などの刺激によって、エクソソームの内包物の機能性が変化することが示された。また、エクソソームがレシピエント細胞へ送達されることも確認できた。現在、腸細胞由来のエクソソームの標的となるモデル細胞をもちいて、ゲノムワイドなトランスクリプトーム解析から、細胞内シグナルに与える影響について研究を進めている。