表題番号:2023C-210 日付:2024/04/04
研究課題発達障害者の情報取り込み特性の検出
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 大須 理英子
(連携研究者) 早稲田大学 次席研究員 土屋彩茜
(連携研究者) 広島市立大学 教授 満上育久
(連携研究者) 福井大学 教授 小坂浩隆
研究成果概要
ニューロダイバーシティの実現には、異なる認知特性を持つ人同士の相互理解が不可欠である。本研究では自閉スペクトラム者(ASD者)と定型発達者(TD者)との視線の違いに焦点を当て、その違いを相互理解するためのシステムとして、VRを用いた視線提示システムを提案した。具体的には、まず、対面での日常的なコミュニケーション場面を役者に演じていただき、それを360度カメラで、その場面に参加する者のひとりの視点で録画した。それをVRゴーグル内で再生することで、視聴者は、そのコミュニケーション場面に参加しているような臨場感のある体験が可能となる。このような、VRゴーグル内でのリアルな体験場面での視線の動きを計測した。視線は、VRゴーグルに装備されたアイトラッカーを用いた。VRゴーグルで場面を体験する被験者は成人ASD者と成人TD者であった。さらに、それによって 計測した視点を、元の360度映像に重ねることで、ASD者やTD者が、同じコミュニケーション場面でどこを見ているかを再現するシステムを構築した。このようなシステムにより、ASD者がTD者の、TD者ASD者の視線、すなわち、視覚情報の取り込み型の違いを体験することができる。これにより、相互理解がはかれると考える。実際に、視線を計測した結果、これまでの子供の研究においては、ASD児はTD児にくらべ、人物や顔に注意を向けないとされていたが、成人においては、顔に注意を向けないASD者がいる一方、顔に非常によく注目するASD者もいることが明らかになった。これらの結果は、ASD者が発達の過程において、顔を見るようにすべき、という教育を受けて、それに過剰に適応する場合があるという可能性を示唆するものである。