表題番号:2023C-203 日付:2024/04/05
研究課題所沢キャンパスに隣接する狭山湖周辺の約100年間にわたり非人為影響下だった二次林における生態系サービスの評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 准教授 平塚 基志
研究成果概要
本研究では狭山湖周辺のコナラ二次林を対象に、生態系サービスの評価を進めた。とくに、2021年から被害が拡大したナラ枯れの特徴を解析することから、その生態系サービスへの影響を評価した。ナラ枯れは2021年夏にはコナラの大径木からナラ類集団枯損が拡大した。こうした被害を斜面方位(8方位)で比較すると、北側、北西側、及び北東側斜面でナラ枯れが顕著に発生していた。とくに北側(82.8%)と北西側(80.4%)で被害が確認された。一方、南側、南東側、及び南西側では相対的にナラ枯れの被害が小さかった。とくに南側(37.2%)と南東側(40.4%)では被害が小さかった。他方、ナラ枯れが最初に確認された2021年から2023年にかけて、ナラ枯れによる被害度が悪化した個体が110本(59%)であり、被害度が改善した個体が75本(38%)だった。さらに、被害度に変化がない個体は12本(6%) だった。2022年から2023年にかけては、同じく137本(49%)、101本(36%)、42本(15%)だった。狭山丘陵のうち、所沢キャンパス内のコナラ二次林を調査に分析したところ、全体としては、被害拡大から3年間で約18%が枯死し、それは他地域における先行研究よりも小さかった。ナラ枯れ発生後の生残・枯死を整理すると、3年間でナラ枯れの被害度が回復する個体も多かったことから、被害木を伐採・除去するかは地域特性を踏まえることが重要だと考えられた。
以上より、ナラ枯れによる倒木等による人的被害が懸念される中、効果的に伐採等の対策を行うにあたっての基礎情報を提供するに至った。また、ナラ枯れの特徴を市民に広く提供することで、市民参加型で身近な里山でのナラ枯れを考え、例えばナラ枯れによる枯死は大気中への二酸化炭素の排出にもなる等を踏まえつつ、対処方法についての合意形成の重要性を分析した。