表題番号:2023C-202 日付:2024/04/05
研究課題日本映画における敗戦と占領期についての文化資源学的考察
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 福島 勲
研究成果概要
 本研究では、終戦の際、映画監督・小津安二郎が滞在しており、その後、しばらく抑留生活を行っていたシンガポールの調査を行った。小津とシンガポールの関係については、現地で接収したアメリカ映画を大量に観て、それが小津の戦後の活躍を用意したという言説が多く見られるが、実際のところ、最初は占領者として、また、敗戦後は被収容者として暮らしたシンガポールの経験は、戦後の小津にどのような影響をもたらしたのだろうか。小津のシンガポールでの生活を扱ったものとしては貴田庄『小津安二郎とシンガポール』(2021年)があるが、これを資料として、小津のシンガポール滞在の実像に迫るべく、シンガポール国立図書館、シンガポール国立博物館、日本占領時期死難人民記念碑、昭南島忠霊塔跡地、日本人墓地公園、旧フォード工場博物館、チャンギ・チャペル&博物館、キャセイ・ビル、旧YMCAビル跡地(憲兵隊東支部所在地)等で現地調査を行った。その結果、小津の滞在そのものに関わる痕跡を発見することはできなかったものの、小津が暮らした当時のシンガポールの政治的・社会的環境について、大いに理解を深めることができた。