表題番号:2023C-201
日付:2024/02/05
研究課題進化の遡上による有用酵素の探索
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 教授 | 赤沼 哲史 |
- 研究成果概要
- 過去の生物そのものを蘇らせることはできないが、過去の生物が持った遺伝子やタンパク質を復元することは可能となりつつある。従来の研究から、共通祖先生物の酵素を復元することによって、超好熱性酵素が得られること、共通祖先より現代に近い祖先酵素を復元することで、優れた耐熱性と高い低温活性を併せ持った現存酵素には稀な特性を持つ酵素が得られることが示された。本研究では、祖先酵素を網羅的に復元することによって、酵素の進化についての知見を得るとともに、産業的、工業的に有用な酵素を獲得することを目指した。
材料としては3-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(IPMDH)を用いた。過去の研究で、作成したIPMDHの分子系統樹を用い、真正細菌共通祖先IPMDHから現存の大腸菌IPMDHにつながる系統上の11個の祖先型IPMDHのアミノ酸配列を推定し、実際に合成した。さらに、これらの祖先型IPMDHの耐熱性測定と活性測定をおこなった。その結果、共通祖先IPMDHは高い変性温度を示し、共通祖先から大腸菌IPMDHへと進化していくにつれて徐々に耐熱性が低下した。一方、活性の特性に関しては進化のある一段階で大きく変化した。すなわち、共通祖先から数えて3番目の祖先型IPMDHから4番目の祖先型IPMDHに進化する際に、基質や補酵素に対する親和性が大きく悪化すると同時に、比活性や触媒のターンオーバー数は大きく向上した。今後は他の現存常温菌IPMDHに至る系統上の祖先型IPMDHに加え、現存の好熱菌IPMDHに至る系統の祖先型IPMDHも網羅的に復元し、酵素の進化についての知見を得ることを目指すとともに、産業利用に有用な性質を持つ酵素の探索をおこなっていく予定である。