表題番号:2023C-196 日付:2024/01/17
研究課題行動モデル分析によるデジタルツイン時代のアナログ・デジタル博物館展示計画のあり方
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 佐野 友紀
(連携研究者) 早稲田大学大学院 大学院修士課程 新谷里々花
研究成果概要

本研究は、アートセンターを中心とした地域活動調査と、博物館等展示施設における現地での行動観察を通して、観覧者の観覧行動モデルを構築し、筆者らが開発した利用者シミュレーション(SimTread)等を通して調査・分析し、利用者行動・動線分析の視点から新たな計画を検討した。具体的には、以下の2つの実践的な研究を実施した。

1)アートセンターを中心とした地域活動調査:地方のアートセンターがコミュニティの中心となっている先進事例として青森県八戸市の八戸美術館、八戸ポータルミュージアムはっち、まちぐみなどを調査し学芸員等にインタビュー調査を行い状況を把握した。八戸美術館は公共のアートセンターとして中心にジャイアントホールというユニバーサル空間をもち、アートのみではなくスポーツイベントを含んだ多彩な地域活動が行われていること、まちぐみは八戸ポータルミュージアムはっちと連携し、また、地域や地域外の関係人口を増やすために、組員というシステムを取り、活動主体を増やしていることが明らかになった。加えて、愛知県豊田市美術館において、作品ガイドボランティアに対するインタビューを行い、従来の活動として対話型鑑賞(Visual Thinking Strategies)ワークショップを実践している点などを把握した。

2)展示施設における行動観察調査およびシミュレーション分析:早稲田大学に設置された3つの博物館および岐阜県の公立博物館において、ビデオ撮影による詳細な行動分析調査を行なった。この分析により、展示物に対する平均的な観覧時間の指標値を明らかにした。また、観覧行動が全部鑑賞、一部重点鑑賞、一瞥鑑賞、無鑑賞の4つに分類できることを明らかにした。その上で、利用者シミュレーション(SimTread)を用いて、4つの観覧パターンのエージェントにより、3つの観覧施設での観覧行動を再現することで、滞留が生じやすい空間形態、行動形式として、入隅部および折り返し行動のある通路の展示方法の問題点と改善案を計画した。その内容の一部は、日本展示学会において口頭発表を行った。また、日本建築学会の査読論文等に投稿予定である。