表題番号:2023C-190 日付:2025/02/05
研究課題研究開発の投資意思決定に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 葛山 康典
研究成果概要
研究開発投資における意思決定は、投資の成功そのものが不確実であり、かつキャッシュフローが発生する時点が不確実であるという特徴を持つ。本研究では、このような研究開発投資に関する投資意思決定について、研究開発の成功確率が変化し、かつ、開発された製品が生み出すキャッシュフローが不確実である環境における意思決定問題を取り扱った。
Pindyck(1996)では、研究開発投資に関する不確実性を技術的な不確実性とコストに関する不確実性に分類した上で、これら不確実性が有するリアルオプション価値が異なった振る舞いをすることを示している。本研究でも、取り扱う不確実性に関するリアルオプション価値を求めた上で、その振る舞いについて検討を加えた。
本研究では、投資の成功確率と、製品の価格が相関を持って確率変動をする環境を想定しているが、相関がリアルオプション価値に与える影響についても分析している。一般に、製品価格が上昇することによって、研究開発確率が高まると想定される。Pindyckが指摘するように、リアルオプション分析において、不確実性の種類に応じて研究開発着手が促進されるか、延期されるかに関する振る舞いが異なることが知られている。ふたつの不確実性の間に相関が存在する状況で、不確実性が研究開発投資にどのような影響を与えるか、シミュレーションによる分析を行った。
一方、日本企業に於いて株式報酬制度の導入が積極的に行われている。この制度は、経営者にインセンティブを与えることで、企業価値が高まることを期待したものである。これらの制度を導入した企業に対して資本市場はどのような評価を下しているのであろうか。株式報酬制度の導入に関するアナウンスが、株価にどのような影響を与えているかを分析し、技術系企業における資本市場の反応について検討を加えた。