表題番号:2023C-182 日付:2024/02/22
研究課題X線照射により活性酸素を生じる放射線増感剤に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 大学院情報生産システム研究科 教授 高橋 淳子
研究成果概要

プロトポルフィリンIX(PpIX)前駆体である5-アミノレブリン酸(5-ALA)は、生体に取り込まると腫瘍細胞に特異的にPpIXが蓄積することが知られている。PpIXおよびその誘導体に光を照射すると、光化学反応により蛍光や活性酸素が生じる。この蛍光を利用して腫瘍範囲を特定する「光線力学診断法(Photodynamic Diagnosis)」、また活性酸素の細胞損傷効果を利用した「光線力学療法(Photodynamic Therapy)」が、がん治療法に用いられつつある。一方、PpIXにX線を照射すると活性酸素の生成が増強されることをこれまでに見いだした。PpIXとX線の反応は光による光化学反応に類似しており、光の届かない深部のがんの放射線治療をより効果的に行う「放射線力学療法(Radiodynamic Therapy) 」の可能性を示すものであった。そこでこれまでに、PpIXにより生じる活性酸素種の特定、細胞損傷効果(in vitro試験)、担癌動物を用いた治療効果(in vivo試験)等を行ってきた。しかし、PpIXは化学式C34H34N4O4、分子量562.7の低分子有機化合物でありこの様な有機化合物とX線の物理化学反応に関する研究は殆ど無く、その反応の詳細は未だ不明である。そこで、本課題では基礎的研究を進める為に、PpIX以外の様々な低分子有機化合物のX線に対する応答を、活性酸素種に特異的な活性酸素検出指示薬を用いて評価した。その結果、数種類の腫瘍親和性を有する有機化合物がPpIXと同様の応答をするという結果が得られた。