表題番号:2023C-175 日付:2024/03/01
研究課題MPS法-VOF法による先行流下物凝固後の後続溶融物挙動解析Crosswalk
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 大学院先進理工学研究科 教授 山路 哲史
(連携研究者) 日本原子力研究開発機構 ディビジョン長 吉田 啓之
(連携研究者) 日本原子力研究開発機構 研究副主幹 山下 晋
研究成果概要

軽水炉の過酷事故では金属溶融物が炉内の燃料集合体中等の構造物群を流下し、先行流下物の凝固が後続溶融物を他の経路に選択的に流下させ、炉心損傷進展や事故後のデブリ堆積分布に影響する。このような挙動を解明するために実施された従来の実験は試験部への溶融物の流入境界の不確かさがその後の溶融物挙動に及ぼす影響が大きかったため解析モデルの妥当性確認が困難であった。申請者らはこのような課題を解決するために2022年度に日本原子力研究開発機構(JAEA)と共同で試験部への流入境界の不確かさを低減した実験を提案、実施した。本申請研究では、その結果得られた実験データを活用し、JAEAの有するオイラー法に基づくVOF法解析と申請者らが開発するラグランジュ法に基づくMPS法解析の相互比較(Crosswalk)を実施し、先行流下物の凝固が後続溶融物挙動に及ぼす影響を明らかにした。

オイラー法による解析では気相による冷却効果を小さくすると実験結果と同様に、中央部では溶融物が薄く、壁面近傍部で厚い分布となった。そこで、MPS法による解析においても気相による冷却効果は無視した。流動先端の接触角を仮想的に大きくしたケースや、流動先端部と床の接触熱抵抗を大きくしたケースでは、流動先端部と床の粘性相互作用が後続バルク流体のそれに比べて小さくなり、実験結果と同様な流動挙動を再現できた。すなわち、前者では流動先端部と床との間に微小なギャップが生じ、流動先端部の流動に対する床の抵抗が低下した。また、同様に、流動先端部と床の接触熱抵抗を大きくしたケースでは、流動先端部の溶融物の粘性が低く、床による流動抵抗が低下した。以上の実験、VOF法による解析、MPS法による解析から、低融点合金の流下挙動の模擬には、溶融物と床との伝熱が及ぼす影響が支配的であることが分かり、そのモデリングが重要であることを明らかにした。