研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 国際理工学センター(理工学術院) | 准教授 | 山本 佳奈 |
- 研究成果概要
本研究の目的は、修飾核酸の一つであるホスホロチオエート核酸(天然型核酸のリン酸部位水酸基の一つがチオールに交換された核酸)の効率的な立体選択的合成法の開発である。申請時には、新規合成法として核酸の触媒的かつ立体選択的縮合反応の開発を提案したが、多くの場合オリゴ核酸の合成は固相でされること、一般的に触媒反応は僅かな反応条件の違いに左右されやすいことから、より現実的な提案としてリン酸部位がすでに不斉化された核酸伸長ユニットを用いた立体選択的手法の開発という目標に切り替えた。この目標に向け、まずは立体特異的に且つ高収率でカップリングの進行する核酸伸長ユニットの構造を検討することとした。
このようなコンセプトの核酸伸長ユニットは1990年代にStecおよびLesnikovskiらにより研究されている。いずれの研究でも、核酸伸長ユニットはジアステレオマー混合物として合成されたものを分割して用いており、またそのカップリング収率はオリゴ核酸合成として用いるには低すぎることが課題となっていた。
そこで、まずLesnikovskiらが手がけた核酸伸長ユニットの構造の改良を試みることとした。具体的には、彼らの核酸伸長ユニットでは、カップリングの際の脱離基としてp-nitrophenoxy基が用いられるが、その脱離基をより活性の高いものに変換することでカップリング収率を向上できないかを検討することとした。
その結果、まずLesnikovskiらの報告している核酸伸長ユニットの合成は達成できたが、カップリング収率は最高でも25%程度と、報告されている収率(75-85%)がそもそも再現できなかった。また、脱離基をさらに活性の高いpentafluorophenoxy あるいは3,5-bis(trifluoro)phenoxy 基に変換した伸長ユニットの合成を試みたが、いずれもそれぞれのユニットの電子吸引基のため、それらをリボースに取り付ける反応段階が進行せず、従ってカップリングの検討にまで至っていない。そこで、現在はStecらが開発した構造を基盤としたユニットのデザインに焦点を切り替え検討を続けている。