表題番号:2023C-171 日付:2024/02/06
研究課題ベントナイトの間隙水密度のデータベースの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 国際理工学センター(理工学術院) 准教授 王 海龍
研究成果概要
本研究では,高レベル放射性廃棄物の最終処分に使用すると検討されているベントナイト(粘土の一種類)に吸着される水の密度を明らかにすることを目的とする.高レベル放射性廃棄物(以下:HLW)は,原子力発電所の使用済燃料を回収する際に発生した廃液を固化したガラス固化体を指す.HLW最終処分の有力案として,HLWを地下300m以深の岩盤地層に埋設するとともに周辺に多重バリアを設けることで,数万年にわたり生物圏から隔離する「地層処分」が挙げられている.地層処分システムの多重バリアは,天然バリアの岩盤および人工バリアのガラス固化体・金属容器・ベントナイト系緩衝材で構成され,HLWを超長期にわたって閉じ込めることが期待されている.緩衝材の主要構成材料であるベントナイトは,吸水による体積膨張特性(吸水膨潤特性)を持つ.設置後の地下水の浸入によって,緩衝材が膨潤し,金属容器・緩衝材・岩盤の境界間隙を充填し,多重バリアを一体化し放射性核種の移行を遅延させさるという重要な役割が求められる.多重バリアの一体化は,設計された処分システムの機能発揮の前提でもあり,過去の研究では一体化までのバリア材の挙動を検討されていた.しかし,ベントナイトに浸入した水(間隙水)の密度が自由水密度(=1 g/cm3)を大幅に超えることに対して,過去の研究・検討では取り組まれなかった.それは,間隙水密度を計測する実験法が確立されておらず,正確な計測が不可能であったためである.緩衝材を構成するベントナイトの間隙水密度は,最も基礎的なパラメータの一つであり,それを明らかにするのは,処分施設の安全性評価や閉塞期間の検討,地下水の変動・バリア材の変形挙動の予測などに対して必要不可欠である.研究代表者は,ベントナイトの間隙水密度を計測する実験手法を改良しており,本研究では,既存と改良方法に対する体系的検討による実験方法の確立と,数種類のベントナイトを実験対象とする間隙水密度のデータベース化を目指す.