表題番号:2023C-166 日付:2024/02/14
研究課題2型糖尿病にかかわる新規ヘパトカインによる血糖調節機構の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 合田 亘人
研究成果概要

近年、肝臓は多様な分泌因子を放出することで生体内の血糖値調節に重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。申請者は、これまでのマイクロアレイ解析結果から、2型糖尿病を発症したマウス肝臓で発現誘導される新規の分泌因子を見いだした。そこで本研究では、2型糖尿病における血糖値調節に対する新規分泌因子の機能解析を目指した。この新規分泌因子をコードする遺伝子を肝臓特異的に欠損させたマウスに高脂質高糖質食を15週間投与し、肥満、脂肪肝と2型糖尿病を発症させた。食餌投与期間の体重変化、食餌摂取量、肝体重比および内臓脂肪体重比について解析したところ、この遺伝子欠損マウスとコントロールマウスとの間で顕著な差は認められなかった。次に、様々な負荷試験を行い、血糖調節異常が認められるか確認を行った。経口糖負荷試験では、空腹時血糖および負荷後120分までの測定した全てのポイントにおける血糖値は、この遺伝子の欠損によってコントロール群よりも高値を示すことが分かった。一方、インスリン負荷試験では、血糖値の降下作用の減弱が認められるものの、この遺伝子の欠失による影響は認められなかった。また、ピルビン酸負荷試験でも投与後の血糖値上昇は同程度であった。これらの結果に一致して、肝臓、骨格筋および内臓脂肪組織におけるインスリン投与によるAKTのリン酸化も同程度誘導されることを確認した。さらに、肝糖新生の律速酵素のG6pasePepckの遺伝子発現も、この遺伝子の欠失により大きな変化が生じなかった。以上の結果より、2型糖尿病を発症したマウス肝臓で発現誘導されたこの遺伝子は耐糖能の悪化を抑制する抗糖尿病因子として機能することが明らかになった。また、その機能発現は末梢組織のインスリン感受性と肝糖新生能の調節とは異なる作用点に働きかけることが明らかになった。