表題番号:2023C-162 日付:2024/04/02
研究課題スピン-軌道相互作用による半導体中正孔のスピン変調の量子論理ゲート解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 助教 東条 樹
(連携研究者) 理工学術院 先進理工学部 教授 武田 京三郎
研究成果概要
本研究課題では、空間反転非対称性を有する半導体二次元量子井戸(2DQW)内正孔に注目し、この正孔が有するスピン構造および位相幾何構造を検討した。以下、研究成果の詳細について述べる。空間反転非対称性を有する半導体2DQW内正孔は、強いサブバンド間相互作用とスピン-軌道相互作用(SOI)が生じる。これらの協奏により、Γ点近傍において複数の縮退点が現れる。我々はこの複数縮退点に注目し、これらによるスピンおよび位相幾何構造への変調効果を検討した。この変調効果を抽出するため、我々は複数縮退を表すモデルハミルトニアンを構築し、電子構造とスピンテクスチャを算出し、縮退点間の競合効果によるスピン-運動量ロッキングの破れを見出した。位相幾何構造については、これら縮退点近傍において特徴的なBerry曲率が出現し、Berry位相のエネルギー依存性に特徴的なπ-量子化をもたらすことが明らかとなった。本内容に関連し、3報の論文発表[P3-5]および1回の国際学会発表[C6]を行った。さらに、これら縮退点近傍においては軌道混成に伴う強い非断熱性が生じ、Berry位相に非可換性が表れる。この非可換性に注目し、位相幾何構造に与える影響を議論した。我々はこの非可換性を取り入れた非可換Berry位相行列の定式化に成功し、これをSiGe 2DQW内重い正孔に適用した。縮退点の近傍では、非断熱性がBerry位相行列の非対角成分に表れる。これにより、Berry位相のπ-量子化が変調され、エネルギー依存性に不連続性が引き起こされることを見出した。さらに、非可換Berry位相は行列順序積により記述されるため、これを量子論理ゲートに置き換え、物理現象の新しい描像を与えることに成功した。本内容に関連し、2報の論文発表[P1,2]および5回の国際学会発表[C1-5]を行った。