表題番号:2023C-158 日付:2024/04/15
研究課題原始的なエネルギー獲得系の再現
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 木賀 大介
研究成果概要
本研究は、初期生命が用いるアミノ酸の種類を追及する申請者の一連の研究を拡張するための、基礎となるものである。
全生物の共通祖先も、ある段階では現在の生命と同じように、20種類のアミノ酸をタンパク質合成に用いていたことは間違いない。しかし、生命の初期進化を考察するために、それ以前、20種類のアミノ酸を用いる以前の遺伝暗号について追及する必要がある。
 そこで、本研究では、遺伝暗号に最後に加わった可能性が高いトリプトファン(Trp)が存在せずとも動作する解糖系を再現する。大腸菌については、解糖系の10種類の酵素全てを他の生物由来の酵素で置き換えても、解糖系が動作することが報告されている。この論文では、20種類のアミノ酸すべてを用いた外来酵素が使用されていた。一方、解糖系の酵素によっては、特定の生物でTrpが無い場合が知られている。また、別の酵素では別の生物でTrpが無い場合が知られている。申請者は、すでにDNA配列データベースの検索により、過半の酵素についてTrpが存在しない生物種がいることを確認しており、本研究では、まずこれらの酵素を導入する。さらに、Trpが残っている酵素については、Trpを含まないように変異を導入したライブラリからの選択操作を行う。配列アライメントや立体構造を参考にして、効率の良いライブラリを作成する。
解糖系全体が、Trpが無くとも動作することを示すことを計画した。昨年度までの研究で、解糖系酵素全てについて、Trpが無くとも活性を持つことを明らかにしたが、いくつかの酵素は、活性が大腸菌野生型に対して著しく低かった。本年度は、これらのうち、残りの酵素について、変異体を導入することにより、活性の向上に成功した。次年度以降、酵素遺伝子を集積し、Trpを持たない解糖系の動作を確認する。