表題番号:2023C-156 日付:2024/04/06
研究課題プロコラーゲン特異的分子シャペロンHSP47の機能の起源
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 助教 藤井 一徳
(連携研究者) 井上陽々
研究成果概要
コラーゲンは細胞外マトリクスを構成する主要なタンパク質であり、全ての多細胞動物に存在している。HSP47は小胞体内腔に局在する分子シャペロンであり、コラーゲン前駆体であるプロコラーゲンの3重らせん部分に結合する。少なくとも哺乳類ではHSP47が必須であることが知られているものの、その他のどのような生物がコラーゲンの生合成にHSP47を利用しているのかは明らかになっていない。そこで本研究では、HSP47が生物進化のどの段階で獲得されたのかを明らかにすることを目指した。コラーゲンの構造を模倣した3重らせんペプチドと、様々な生物のHSP47(またはHSP47様タンパク質)を酵母に共発現させ、それらが相互作用するのかをtwo-hybrid法により確かめた。その結果、脊椎動物と尾索動物において相互作用が検出された。さらに、酵母の培養温度を上昇させることでその相互作用がみられなくなることから、これらのHSP47(様タンパク質)は3重らせん構造を形成したペプチドに結合していることが確かめられた。一方で、頭索動物、棘皮動物、節足動物においては、相互作用を検出できなかった。また、大腸菌発現系を用いて発現させたHSP47(様タンパク質)と、ウシ真皮由来I型コラーゲンまたはコラーゲン様ペプチドとの相互作用をin vitro固相結合法により評価したところ、酵母two-hybrid法の結果と同様、脊椎動物と尾索動物のHSP47(様タンパク質)のみがコラーゲン結合性を示した。これらの結果から、HSP47は進化の過程で頭索動物との分岐後、尾索動物と脊椎動物の分岐前に獲得されたことが示唆された。