表題番号:2023C-155 日付:2024/02/09
研究課題軸対称偏光による金属ナノ物質の光学特性制御
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 井村 考平
研究成果概要

 金属ナノ物質に励起される自由電子の集団電子振動(プラズモン)により,非線形光学過程を効率的に誘起することが可能である。偶数次の非線形光学過程は,空間反転対称性のある物質系では励起することができない一方,空間反転対称性のない系や,物質表面では反転対称性が破れるため,これを励起することが可能である。金属ナノ物質における第二高調波発生の直線偏光に対する依存性については明らかになりつつある。光の伝播方向に垂直な断面方向において軸対称となる(軸対称)偏光に対する非線形光学特性については十分に解明されていない。本研究では,金属ナノ物質を対象とし,その第二高調波や非線形発光の軸対称偏光依存性から,光励起電場の空間対称性と偏光特性の相関解明を目指した。

 清浄なガラス基板に化学合成した金ナノプレートを分散させて測定試料とした。試料の形状と光学特性は,それぞれ電子顕微鏡と光学顕微鏡を用いて単粒子レベルで評価した。試料の非線形発光の励起には,モードロックチタンサファイヤレーザーを光源として用いた。励起光の偏光は,波長板と偏光コンバータを用いて調整した。金ナノプレートを集束した軸対称偏光により照射し,試料からの非線形発光を対物レンズで集光し分光検出した。

 試料からの発光を分光分析したところ,励起光よりも短波長の発光成分を含むことが明らかとなった。発光波長の分析や発光信号の励起光強度依存性から,発光には,第二高調波発生と二光子発光が含まれることが明らかとなった。非線形発光を検出し可視化した発光励起像は,入射偏光に顕著に依存すること,アジマスやラジアル偏光では特徴的な空間特性を示すことが明らかとなった。これらの励起像は,プレートのサイズにも顕著に依存する。観測される励起像の空間特性を解明するため,電磁気学計算を用いた解析を行なった。その結果,軸対称偏光の空間特性(対称性)によりプレートにおいて光励起されるプラズモンの固有モードが変化することが明らかとなった。