表題番号:2023C-152
日付:2024/03/30
研究課題π−π相互作用により誘起されるキラリティを有するC3対称化合物の合成と評価
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 柴田 高範 |
- 研究成果概要
ディスプレイや照明、あるいは色素を具現化し得る基盤材料のひとつが「発光性有機分子」であり、新規な機能性有機化合物の開発が活発に行われている。一方最近、キラルな光である円偏光発光(CPL)が、次世代の高輝度液晶ディスプレイの光源や新規な光情報通信の基盤技術として注目されており、「円偏光発光材料としての低分子有機化合物」の開発が強く求められている。本研究では、強いπ–π相互作用に起因するC3対称を有する新規なプロペラ型キラル化合物の不斉合成と光基礎物性の評価を目的した。
すなわち、ヘキサアザトリナフチレン(HATNA)を堅固なπ共役平面を有する中心核として選択し、その周辺に可動性が制限された芳香環部位を導入する。立体的に近い位置に芳香環を強制的に配置することで、分子内でより強いπ–π相互作用を誘起させ、その立体的な歪みに由来するC3対称な不斉空間を創出する。そこで今回報告者は、アリールアルキンを導入することで、空間的に接近する2つのアリール基間に強いπ-π 相互作用をもつ化合物を合成し、置換基による光基礎物性を調査した。3,6-Dibromobenzene-1,2-diamineとhexaketocyclohexaneの縮合環化により6臭化物を生成し、続くアルキンとの6連続薗頭カップリングで 6 つのアリールアルキニル基を導入した HATNA化合物の合成に成功した。アルキン上の置換基として置換フェニル基、ナフチル基、キノリル基、ピリジル基の検討を行い、溶液、固体状態での光学特性を測定し、可視光で吸収が確認され、波長365 nmの光照射で、強い蛍光を観測した。
今後得られた強い発光特性を有するC3対称化合物を光学分割し、キロプティカル特性を測定する予定である。