表題番号:2023C-149 日付:2024/04/10
研究課題異なるボロン酸を有するジボロン酸による単糖類のセンシング
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 石原 浩二
研究成果概要

 糖の捕捉部位としてのピリジルボロン酸と発色部位としてのo-アゾフェニルボロン酸を, o-およびp-キシレンで架橋した新規ジボロン酸(OLO, OLP), D-グルコース, D-ガラクトース, およびD-フルクトースとそれぞれ何対何で反応するのかを, 速度論的手法や分光学的方法により明らかにした(下表)。この表において, 1:2で反応する場合, 最初に反応するピリジルボロン酸部位と糖との反応では可視スペクトルに変化はないため, 次に反応するo-アゾフェニルボロン酸部位がもう一分子の糖と反応する過程が観察されている。そのため, Kの次元は1:1反応と同一である。

これらのジボロン酸と単糖類との25 ºC, pH = 9.00, I = 0.20 M, 10% DMSO水溶液中における条件生成定数K’(下表), 構造最適化計算により, 主にジボロン酸中の2つのボロン酸間の距離と糖のdiol部位間の距離を反映することがわかった。OLO, OLPは共に, D-glucose, D-fructoseに対しては, それぞれ1:1, 1:2で反応するが, D-galactoseに対しては, ボロン酸間の距離が長いOLP1:1で反応するのに対し, 距離の短いOLO1:2で反応する。

K

D-galactose

D-glucose

D-fructose

OLP

57.4 (1:1)

43.6 (1:1)

130 (1:2)

OLO

17.3 (1:2)

159 (1:1)

90.5 (1:2)

ジボロン酸がD-fructose, D-glucoseのどちらと反応しているのかを色調変化で判断することは困難であるが, ヒトの血中の糖濃度が, D-glucose 5 mM, D-galactose 0.05 mM, D-fructose 0.05 mMであることを考慮すると, 上表より, OLOを用いれば血中のD-glucoseのみを検出可能であることがわかる。