研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 古川 行夫 |
- 研究成果概要
大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は現在410 ppm程度となり,地球温暖化の主な原因と考えられている.大気中のCO2を直接回収するダイレクトエアキャプチャー(Direct Air Capture, DAC)は,地球温暖化を解決する方法の一つである.大気中のCO2濃度が低いために,DACでは固体CO2回収剤が開発されているが,CO2回収に大きなエネルギーが必要であり,回収エネルギーが小さな方法の開発が必須である.本研究では,これまで燃焼後CO2回収に使用されてきた代表的アルカノールアミン,モノエタノールアミン(MEA)の溶液を用いてDAC用CO2吸収剤としての性能を研究した.液体回収剤はCO2濃度が低い場合に使用できないとの思い込みがあるが,アミン溶液の性質から使用可能ではないかと予測した.回収エネルギーを小さくするため,液体吸収剤の溶媒として,比熱が小さく,沸点が高いDMSOを使用した.MEAのDMSO溶液(濃度30 wt%)を大気下に長時間,静置してCO2を吸収させた.吸収されたCO2とMEAが反応してMEAカルバメートが生成することが既に分かっており,MEAカルバメート濃度を13C-NMRで測定して,吸収されたCO2量を決定した.吸収初期速度は0.178 mol/L hであり,25時間経過後からほぼ飽和し,飽和CO2濃度は2.20 mol/Lであった.純粋なCO2気体をバブルした場合には吸収速度は5.88 mol/L hで,飽和CO2濃度は3.18 L/molであった.400 ppmは全圧を1 atmとすると0.0004 atmであるが,純粋なCO2気体の場合と比較して,飽和CO2吸収濃度は純粋気体の場合の69%と大きな値であった.MEAのDMSO溶液は低濃度CO2気体からも多量のCO2を吸収することが分かった.太陽熱調理器を用いて,晴天の日に,CO2を吸収したMEA/DMSO溶液を加熱したところCO2放散量は100%であった.現在NEDOで開発されている小型DAC装置の性能は5 kg/dである.MEA/DMSO吸収液で大気下でCO2を24 h吸収し,太陽熱ですべてを放散できる装置を考えると,24 h後のCO2吸収濃度は1.74 mol/Lであり,約65 Lの吸収液の装置となる.太陽熱を利用すると回収エネルギーもかなり小さくなり,この方式を用いたDAC装置は有望である.