表題番号:2023C-143 日付:2024/04/15
研究課題Generalized Bornモデルにおける電場エネルギー積分下限値の影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 高野 光則
研究成果概要
生体分子系のMD計算では溶媒の水を一様誘電体として扱う一般化ボルン(GB)モデルが広く用いられている。申請者の研究室では,これまで,GBモデルの根幹をなすクーロン電場エネルギーの空間積分について,その上限値(カットオフ値)がタンパク質-タンパク質間のクーロン相互作用に大きな影響を及ぼすことを示してきた(Mizuhara, Parkin, Umezawa, Ohnuki, Takano, J. Phys. Chem. B (2016)。このクーロン電場エネルギーの空間積分には下限値(固有半径とも呼ばれる)も存在し,通常は固有半径には原子半径(ファンデルワールス半径)が用いられている。この固有半径も生体分子間のクーロン相互作用に大きな影響を及ぼすことが知られており,相互作用の調整パラメータとして重宝されてきたが,固有半径が生体分子間のクーロン相互作用にどのような機構で影響を及ぼすかが不明であった。本研究では,この物理機構の解明に取り組んだ。その結果、固有半径を大きくするとクーロン引力が増強され,それが電荷間の結合に伴う実効的な誘電率の低下にあることを明確に示した。さらに電場エネルギー密度の空間積分の下限(固有半径)と上限(カットオフ値)の2つの対になるパラメータによってタンパク質-タンパク質分子間のクーロン相互作用エネルギー地形を2方向(近距離領域と遠距離領域)から調整できることを示した。研究成果はInternational Journal of Molecular Science誌(Parkin and Takano, 2023)で発表した。