表題番号:2023C-140 日付:2024/02/05
研究課題トポロジカル相転移検出のための汎用的機械学習手法の理論設計
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 望月 維人
研究成果概要
本研究課題では、トポロジカル相転移の代表例である2次元古典スピン模型のBerezinskii-Kosterlitz-Thouless(BKT)転移を検出する汎用的な機械学習手法を構築することを目指した。通常の「対称性の破れを伴う相転移」と異なり、対称性が破れず明確な秩序変数を持たないBKT転移は、比熱などの物理量に現れる異常と相転移点が対応していないため、相転移研究に通常に用いられるモンテカルロ法などの統計力学的手法の適用が難しい。そこで、ニューラルネットワークを用いた機械学習により、画像認識の原理に基づく相状態分類によりBKT転移を検出する方法の研究に取り組んだ。これまでに提案された手法は、相転移や相の特徴量を知っていることが前提となる「データの事前加工」や、相転移温度や相の数といったモデルの性質に関する事前知識を前提とするものが多く、未知のスピン模型におけるBKT転移の検出が困難であった。以前我々は、2 次元𝑞状態クロック模型を対象に手法の構築・検証を行い、「温度同定型(Temperature Identification type)」と呼ばれるニューラルネットワークにより2回の逐次BKT転移を検出することに成功した。本研究では、スピンが連続自由度であるために、よりBKT転移の検出が困難になる2次元古典XXZ模型を対象に、「温度同定型」に加え、データの事前加工やモデルに関する事前知識を最低限にとどめた「相分類型(Phase Classification type)」と呼ばれる手法を開発し、その適用可能性を調べた。その結果、この方法がモンテカルロ法に比べて計算時間を大幅に短縮することができることや、広いパラメータ領域でBKT転移を検出できることを示すことができた。この成果を論文にまとめアメリカ物理学会の査読付き論文誌Physical Review B誌に発表した。また、多くの会議や学会で招待講演、口頭講演、ポスター発表を行った。さらに、この研究で開発した重み行列の最適化コードを援用して、アメーバ模倣型情報処理技術の研究を開始し、得られた成果を応物学会等で発表した。また論文を執筆中である。