表題番号:2023C-138 日付:2024/03/10
研究課題2次元マイクロキャビティレーザーの選択励起に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 原山 卓久
研究成果概要

 円形や矩形のレーザーキャビティでは光線軌道は規則正しい図形を描き、固有波動関数も規則的な波動パターンとなる。これに対して、変形キャビティでは、形状に起因する非線形性により、光線軌道が複雑な軌跡を描く光線カオスを生じ、固有関数が複雑な波動パターンとなる波動カオスを生じる。2次元形状を有するマイクロキャビティレーザーは、キャビティ形状に起因する非線形性に加え、共鳴波動関数がレーザー媒質を介して相互作用し非常に複雑で豊かな非線形ダイナミクスを呈するというもう1つの非線形性をも含んでいる。我々は、このような従来の波動カオス研究では扱われてこなかった2重の非線形性が、レーザー媒質をマイクロキャビティ内部に一様分布させた場合には、キャビティ全体に広がった波動関数による普遍的単一モード発振という新しいカオス系の普遍則をもたらすことを明らかにした。本研究課題では、この研究をさらに発展させ、レーザー媒質が一様に分布していない選択励起の場合に起きる新しい2重非線形現象を理論と数値計算により解明した。

 完全カオスキャビティのすべての共鳴波動関数はキャビティ全体に広がっていて、レーザー媒質が存在するキャビティの一部分の選択励起領域との重なりが小さいため、1つの共鳴波動関数だけでレーザー媒質を通じて外部から注入されるエネルギーを獲得しようとすることは非常に効率が悪い。そのため、複数の共鳴波動関数が同時に発振し、レーザー媒質を介した非線形相互作用により協力し、それら複数の共鳴波動関数を互いに重ね合わせることで、レーザー媒質の存在する領域にだけ発振状態の強度パターンを局在させ、効率を向上させることを解明した。特に、選択励起領域を不安定周期軌道上に設定したときに得られる発振状態を、共鳴波動関数の自己組織化により形成された非線形スカーモードと呼ぶ。