表題番号:2023C-137 日付:2024/03/30
研究課題人と同様の蝕知動作により触覚感覚を認識・弁別する触覚センサに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 澤田 秀之
研究成果概要
 知能化された環境と、機能拡張された人間が共存する共生社会へと繋げるアプローチの一つとして、メタバースやテレプレゼンスの研究が進められている。これらの研究においては、三次元映像と音声、音響に基づいた、主に視聴覚と力覚を通したインタラクションの実現が先行し、実環境に於いて人間同士が自然におこなうタッチコミュニケーションや触覚を通した知覚に関するものは、未だ基礎研究のレベルに留まっている。本研究では、直径50~100μmに成型された形状記憶合金(SMA)ワイヤの物理特性を応用した、新しい微小力センサの開発と、触覚センサへの応用展開を進めた。
 SMAは、外力により負荷を与えて変形させても、温度を変化させるにより相変態が起こり,元の形状を自律的に回復する特性を持つ合金である。これらの相変態を起こす要因として、温度変化と応力変化の2つがある。温度変化による相変態に対する性質が形状記憶効果であり、応力変化による相変態によって起こる性質が超弾性現象である。本研究では、SMAの超弾性現象に着目し、SMAワイヤに対する温度変化、外力による負荷と、長さ方向の変位の間の特性を詳細に調べ、微小な力を高精度に計測可能な力センサを開発した。更に本センサをアレイ状に並べた触覚センサを構築し、人間が触覚を知覚する際のなぞり動作によって触覚感覚を高精度に計測可能なデバイスを実現した。構築した触覚センサシステムについて、なぞり動作における触覚感覚のセンシング実験をおこなった。実験条件を統一するためにXYプロッタにSMAセンサデバイスを取り付け、テクスチャの異なる6種類の素材をなぞる動作をおこなった。その結果、構築したセンサからテクスチャの違いを反映した出力が得られることが解った。また機械学習によるテクスチャ弁別実験も行い、良好に素材の認識が出来ることを示した。