表題番号:2023C-135 日付:2024/04/03
研究課題β-ボリルカルボニル化合物の立体選択的合成と反応性の検証
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 准教授 細川 誠二郎
研究成果概要

本研究は、β位にホウ素を有するカルボニル化合物の立体選択的な合成と反応性を調べることを目的とする。まず立体選択的な合成については、不斉補助基としてアミノ酸由来のオキサゾリジノンをもつα,β-不飽和イミド化合物に対し、共役付加によってβ位にホウ素を導入することを検討した。特に、生物活性天然有機化合物の合成に利用されることが見込まれる、α位にメチル基を有する三置換α,β-不飽和カルボニル化合物に対するホウ素の共役付加反応においては、低い立体選択制の例しか報告されていない。γ位がイソプロピル基となった三置換α,β-不飽和イミドに対するホウ素の共役付加について種々検討を行ったが、中程度の選択性(68ds)が得られるにとどまった。しかしながら、γ位にメチル基、δ位にt-ブチルジメチルシロキシ基をもつ化合物では90%dsと高い選択性が得られた。この原因を調べるべく、不斉補助基を不斉炭素を含まないものに変えるなど類縁体を検討した結果、γ位のメチル基の存在とδ位のt-ブチルジメチルシロキシ基の立体化学が、ホウ素の共役付加の立体選択性に大きくかかわることを解明した。さらに、生成物のβ位のホウ素の酸素官能基への変換について、次亜塩素酸水溶液を用いることで良好な収率で水酸基への変換が起こることを見出した。特にβ-ボリルイミドではこの酸化方法が従来の酸化方法よりも良い収率で対応するアルコールを与えた。

また、β-ボリルアルデヒドとしてβ位にピナコールをリガンドとするホウ素が付いたアルデヒドの反応性を調べた結果、アリルシランとの反応(細見‐櫻井反応)にて、ルイス酸として三塩化ホウ素を用いた場合に良好な立体選択性(90%ds)で反応が進行した。