表題番号:2023C-128 日付:2024/03/29
研究課題王陽明著作の出版と陽明後学のネットワークの形成について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 永冨 青地
研究成果概要

明代中期に勃興し、明代後期において爆発的に流行した陽明学について、王陽明(王守仁)の著作の出版から、その流行の実態を研究しようとする試みは、申請者である永冨の著作である『王守仁著作の文献学的研究』(汲古書院、二〇〇七)を嚆矢とするものであり、その後、中国本土においても本書の内容が多数引用されたことからしても、このような研究の方向の有用性は実証されたものと考えられる。 しかしながら、これらの書籍を刊行した、陽明後学の実態については、従来研究されることはほとんどなかった。

そのため、本研究においては、明代後期において、王守仁の著作のうち、特に軍事関係の文章が多く編纂されたことに着目し、その実態の解明に努めた。

明後期の内憂外患交々至る状況において、王守仁の輝かしい軍功はあらためて注目を浴びるようになり、それ以前の哲学者としての王守仁像に加え、兵法家としての王守仁に脚光が当てられるようになったのである。

本研究においては、それらの編纂物のリストを作成するとともに、そのうちの主要なものについて、論文の作成を行った。

今日の中国においては、『陽明後学文献叢書』(鳳凰出版社、刊行継続中)によって、より広い範囲の陽明後学に関心が寄せられるようになってはいるものの、王守仁の兵法関係の著作の編纂に関してはほとんど関心が寄せられてはいなかったため、今後、学会での発表、論文の執筆により、本研究の成果に関しては、国際的な交流が十分に可能となったものと考えられる次第である。