表題番号:2023C-123 日付:2023/11/07
研究課題感圧・感温塗料計測法の高精度化に向けた研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 松田 佑
研究成果概要
感圧・感温塗料(Pressure-/Temperature-Sensitive Paint; PSP/TSP)計測法は,蛍光・りん光分子の酸素消光あるいは熱消光作用を利用した圧力・温度分布計測法である.PSP/TSPでは,これらの色素分子を含んだ塗膜を計測対象に塗布し,これを光励起・発光させ,その発光強度の変化をカメラ撮影することで,物体表面の圧力・温度分布計測を流れ場に対して非侵襲に計測できる.圧力や温度といったスカラー量を非侵襲に分布計測できる手法は他になく,近年非常に注目を集めている計測法である.一方で,カメラ撮影することから,撮影の露光時間が短くなる,PSP/TSPの発光強度変化量が小さくなるような条件においては,計測量がカメラノイズと同程度になるという問題点がある.そのため,このようなノイズが多量に含まれた計測データの中から,興味のある信号を取り出す手法が重要となる.著者らはこれまで計測データのモード分解とスパースモデリングの枠組みを用いることでノイズ除去を行う手法を提案してきた.すなわち,流れ場の時系列データから特異値分解を行うことで,流れ場を空間モードとその時間変化の重ね合わせとして表現する.このとき,高次の空間モードにはノイズが多く含まれることから,高次のモードを除いて元のデータを再構成することでノイズを低減することが期待できる.しかし,再構成にあたって使用するモードを客観的な手法で選択する手法が無かったために,著者らはスパースモデリングを用いることで数理的に使用するモードを選択する手法を提案していた.今年度は,この手法についてさらなる改良を試みた.具体的には,計測データを特異値分解した際に現れる時間変化を表す項を使用していなかったため,これを含めることでさらなる改善を期待した.具体的には時間変化を表す項の解析にマルチチャンネル特異スペクトル解析を適用し,時間変化に関しても滑らかさを要求する.これを上述の手法に組み入れることで,空間モードと時間変化を適切に考慮した手法とした.本研究では,これを実際の計測データに適用しその有効性を確認した.