表題番号:2023C-122 日付:2024/04/18
研究課題焼結収縮を考慮したハニカム型CO2吸収セラミックスの微細構造の適正化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 中垣 隆雄
研究成果概要
近年,地球温暖化対策としてCO2排出量削減への取り組みが世界的に加速している.日本では鉄鋼業界のCO2排出量が全体の約13%を占め,製鉄所から排出されるCO2を分離・回収する技術が開発されている.リチウムシリケート(Li4SiO4,LS)は400~650 oCでCO2を吸収,700~850 oCで再生する固体吸収材であり,再生に必要なエネルギーを吸収時の反応熱から高いエクセルギー率で回収できるため,高温プロセスと組み合わせたCCUSに適している.これまでの研究により,LSによるCO2の吸収・放出反応は,吸収反応におけるCO2の固体内拡散が全体の律速となることがわかっており,過去には円筒ペレット形やストロー形等のLSについて形状設計がなされてきた.
本研究では吸収容量を低下させずに,反応器通過時の圧力損失を抑えることが可能なハニカム形状のLSを対象とした.しかしながら,従来の方法で作製した供試体では,焼成時の過度な焼結によるCO2の拡散阻害や,焼成前後の変形・亀裂が課題となっていた.種々の焼成条件について検討したところ,昇温中に700 oCの温度で一定時間保持することにより,焼成体の収縮が抑えられ,吸収容量の向上と変形の緩和に一定の効果が見られた.また,焼成過程で揮発させる添加物について,揮発速度の低減による亀裂の抑制効果が確認された.さらに,ハニカムから切り出した試験片を焼成したところ,断面内で異なる収縮率の分布が見られ,不均一な収縮により変形が生じていることがわかった.これは押出成形において,混練体の一部が金具により狭窄され,粉体の充填度に差が生じるためだとと考えられる.そのため,従来の押出成形に代わり,等方的な収縮が期待できるゲルキャスティング成形を実施し,その効果を確認した.