表題番号:2023C-121 日付:2024/04/05
研究課題小型水中移動ロボットのための吸着機構の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 石井 裕之
研究成果概要

近年,野生動物にセンサとデータロガーを装着し,その動物の生態や生息環境を長期的に記録し,その解析を通して野生動物の理解を目指すバイオロギングと呼ばれる調査手法が注目を集めている.バイオロギングは海洋動物など人間による直接的な観察が難しい環境に生息する動物の調査手法として極めて有効であるが,バイオロギングのためのデバイスを調査対象となる野生動物へ取り付けるのに大きな困難を伴う.特に,人間への警戒心が強い生物や,そもそも捕獲が難しい動物などのバイオロギングを行うことは非常に難しい.そこで本研究の最終的な目的は,対象動物を捕獲することなく自力で海洋動物に付着してバイオロギングを行うロボットの開発とする.本研究では,体が大きく頑丈であり,比較的行動が穏やかなアオウミガメを対象動物とし,吸盤を用いてアオウミガメの甲羅に付着することが可能なロボットの開発に取り組んだ.ウミガメの甲羅は曲面であり平坦な部分が少ないため,単体の吸盤ではなく吸盤アレイ機構によって付着する事とする.吸盤アレイ機構を開発するためには水中でウミガメの甲羅に付着可能な吸盤が必要である.そこで,まずウミガメの甲羅への吸着を目的とした吸盤の設計と製作を行った.任意のタイミングでの吸盤の吸着と脱離の切り替えを可能とするため,シリンジポンプによって吸盤内の圧力を変化させる機構を開発した.本研究では様々な半径の吸盤を製作して,名古屋港水族館にてウミガメの甲羅に吸着させて実験を行い,吸盤半径と吸着力の関係を調べた.また,変形前の吸盤半径を用いて計算した理論上の吸着力と計測された吸着力の比較を行った.