表題番号:2023C-120 日付:2024/04/05
研究課題身体と制御した環境との相互作用に基づいた新たな動作の組織化方法に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 上杉 繁
研究成果概要
動作のこつを自ら探索する方法についてこれまで探求してきた.その中で,発達障害の治療現場を分析し,発達のための必要条件として河本がまとめた知見を (河本,2007),以下の3条件のように解釈した.
・対象となる動作に関連する身体部位の姿勢や力の込め具合などの差異を感じ取ることができる
・動作の成功,失敗の境界を探索することができる
・どのように動かせばよいのか,動きの実感としてのイメージができる
これを踏まえ,肘捻じり,肩甲骨単独挙上,自転車ペダリング,走動作などを対象に,こつの探索を支援する道具・装置のデザインに取り組んできた.
本研究では,探索された手がかりを活用し,動作の組織化を支援するための,道具のデザインに関する基本的なアプローチについて検討することにした.そこで,身体動作の基盤となるメカニズムに着目した.人間の全身には600を超える筋肉が存在するとも言われており,合理的な動きを生み出すための,超多自由度である筋肉の制御方法に関する問題は古くから考えられてきた.神経的なメカニズムに加えて力学的なメカニズムも存在しており,後者に関しては例えば,身体動作の可動性や安定性において,複数部位をつなぐ張力伝達の作用が示されている.張力伝達には,引張材として機能する筋膜・筋・腱,さらに引張材を支持する,圧縮材として機能する骨格からなる構造が基盤にあると考えられる.引張材と圧縮材から構成される構造はテンセグリティと呼称され,特に身体においては,引張材の特性が特徴的であるといえる.身体の基盤にあるテンセグリティを身体の外側で人工的に構築し,身体と装着した構造体との相互作用の中で,構造体の力学的特性を身体動作の状況に応じて制御することにより,動作の組織化を支援する枠組みを構想した.そして,身体に装着するテンセグリティ構造体に必要な機能について,実験的装置の開発を通して調査した.