表題番号:2023C-116 日付:2024/03/28
研究課題鋼合成桁の耐荷力に関する解析的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 小野 潔
研究成果概要
 橋梁の建設コスト削減に関する要求は,年々大きくなってきている.橋梁の建設コストを縮減するための1つの手法として,道路橋を構成する部材の一部塑性化を考慮した耐荷力評価法を確立することが望まれる.しかしながら,鋼橋で最も一般的な形式である桁構造の耐荷力評価法は,部材の線形挙動内での評価が中心となっており,昭和48年の道示から約50年以上もの間,改定されていない.他方,より合理的な設計法の開発が求められているものの,鋼桁の耐荷力に関する研究が不足しているため,新たな設計法を開発する上で,必要な情報が十分に得られていない.特に,鋼桁に塑性化を許容させた設計法を開発する上で必要となる鋼桁の耐荷力に関する情報は不足している.そこで,本研究では,鋼合成桁の塑性化を考慮した設計法開発のため,耐荷力のうち曲げ耐荷力に着目し,鋼合成桁の耐荷力解析を実施した.
 解析により鋼合成桁の曲げ耐荷力を適切に評価するには,実験結果との比較により解析手法の妥当性を検証する必要がある.そこで,既往の研究で実施された鋼合成桁の曲げ耐荷力実験結果と解析結果との比較を行った.その結果,最大耐力付近までであれば,解析結果は実験結果を比較的精度良く再現できることを確認した.この妥当性を検証した解析により,鋼桁の鋼種としてSBHS500を使用し,ウェブの幅厚比を現行道示の限界幅厚比としたモデル,限界幅厚比の1.2倍としたモデルで解析を実施し,比較を行った.その結果,2つのモデルで,最大荷重を降伏荷重で除した値には,ほとんど差が見られなかった.この結果は,SBHS00を用いた合成桁のウェブの限界幅厚比を緩和(大きく)できる可能性を示唆しており,鋼合成桁の建設コスト縮減につながる有用な知見となっている.