表題番号:2023C-114 日付:2023/10/27
研究課題せん断補強鉄筋が不要な鋼繊維補強RC杭の製作とそのせん断実験
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 秋山 充良
研究成果概要

鋼繊維補強コンクリート(SFRC)は,引張に対する抵抗力が小さいコンクリートの弱点を補うため,鋼繊維をコンクリートに混入した材料である。コンクリートのひび割れ位置に存在する鋼繊維の架橋効果により,ひび割れ発生後でも脆性的に引張抵抗を失わず,その軟化勾配が緩やかなものとなる。一方,SFRC部材は,鋼繊維の配向をコントロールすることが困難であり,結果として部材の耐荷力にばらつきが生じる。そこで,曲げモーメントは軸方向鉄筋により負担させる一方で,せん断ひび割れの発生と進展の抵抗に鋼繊維を利用し,せん断補強鉄筋の代替とする検討を試みた。特に,杭体への適用を念頭に置いている。過去に,実験室内で小型モーターを用いた遠心成形装置を製作し,コンクリートの配合や遠心成型時の回転速度や回転時間が鋼繊維の配向に及ぼす影響などの基礎検討,および,同定された最適な条件で製作したSFRC杭のせん断実験を行った。その結果,鋼繊維量の変化に対するせん断強度の増加割合は,既往のSFRC部材の曲げ実験で得られた終局曲げモーメントの増加割合よりも相当に大きいものであり,鋼繊維はせん断補強鉄筋の代替として用いる方が効果的であることを確認した。

そこで,本研究では,直径200 mm350 mmSFRC杭をパイル工場内の実機を用いて製造した。まず,X線撮影を行いながら,鋼繊維を部材軸直角方向に配向させる条件(鋼繊維形状や遠心成形法)を整理した。次いで,せん断実験を行い,鋼繊維の有無や杭径がせん断強度に及ぼす影響を検討し,鋼繊維によるせん断補強鉄筋の代替可能性を検討した。特に,SFRC部材では,鋼繊維の効果によりせん断ひび割れが分散して発生するため,鋼繊維を使用しない通常のRC部材に比べて,寸法効果の影響が低減される可能性が指摘されている。本研究でも杭径によるせん断強度の違いを考察し,SFRC杭における寸法効果の基礎資料を得た。