表題番号:2023C-097 日付:2024/02/05
研究課題移動遅延を考慮したプランニングと実行機構の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 菅原 俊治
研究成果概要
本研究では、マルチエージェント搬送問題 (multi-agent pickup and delivery problem, MAPD)において、エージェントの行動に遅延が発生した場合に、局所的な修正で衝突やデッドロック状態に陥らず、目的地への到達を保証するアルゴリズムの提案を目的とする。
    アマゾンの倉庫など、近年の自動運搬ロボットを想定した倉庫(自動倉庫)環境では、それらが容易に衝突回避でき、比較的単純なアルゴリズムで行動できるように事前設計されている。しかし、たとえば、建設・工事現場での資材の自動運送では、このような事前の設計はできず、工事の進行に伴い新たな資材置き場や柱や壁が構築され、経路も徐々に変わりうる。このような環境では、既存研究のアルゴリズムはそのままでは利用できず、環境の変化も考慮する特定の環境に適応させる学習も必ずしも有効ではない。そのため、上記の環境でも、学習に頼らず効率的で到達性も保証できるアルゴリズムによる運用が必須となる。さらに実環境では、理想的な環境を想定したアルゴリズムによる経路生成を使用しても、移動速度や作業時間も計画通り進まず、遅延が発生する可能性が高い。それに対処するには、衝突回避や迂回などで複数のエージェントに影響が及ぶため、全体の経路を計画し直すことが多く、結果としてコストが高くなる。
     本研究期間の成果では、上記の事前設計できない環境で、遅延やセンサーによる停止(たとえば危険回避のため)が特定のエージェントに発生しても、関連する局所的な行動の修正で、到達性を保証しながらも衝突を起こさない、完全分散アルゴリズムを提案した。この結果は、人工知能の分野でも最高ランクと評価される国際会議に採択された。