表題番号:2023C-095 日付:2023/11/03
研究課題ビッグデータ解析基盤に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 山名 早人
研究成果概要

あらゆるモノがつながり、多種多様量のデータが基盤となるSociety5.0時代、データの利活用の促進のためには、個人情報、プライバシー問題の解決が欠かせない。これを解決する技術として、データを暗号化し暗号のままあらゆる処理を可能とする技術がある。暗号化したままでの個人情報や機微なデータ処理ができれば、大きな社会変革が期待される。本研究では、2023年度、同暗号を実現するライブラリについて比較を実施し、それぞれのライブラリの優劣について技術的比較検討を行った。

具体的には、本分野で最も利用されているIBMHeLib、マイクロソフトのMicrosoftSEAL、そして準同型暗号標準化団体のOpenFHEを対象とした。これらのライブラリには、それぞれ得失があり、どのような場合にどのライブラリを使うべきかという点について不明瞭な点が多い。本研究では、これらの3ライブラリを比較し得失を明かにすることを目的とした。

3つのライブラリを評価するために、畳み込みニューラルネットワーク推論(CNN)をそれぞれのライブラリを用いて実装し、その実行時間を解析した。その結果、Microsoft SEALOpenFHE56%以下、HElib17%以下という最短の実行時間を達成しており、高速な処理を目的とする場合に適することが分かった。一方で、使いやすさの点では、OpenFHEが他のライブラリに優る。これは、プログラム開発者が、(1)rescalingと呼ばれる桁合わせ処理を考える必要がない点、(2)CKKSスキームを使用する際のKeyswitchingと呼ばれる処理について計算の特性に合わせて最適なものを選択できる点にある。一方で、(1)の自動rescalingを用いた場合、プログラマが手動でrescalingを行う場合に比較して約5倍実行時間が長くなることから、利用者のニーズに応じたライブラリ選択が重要である。