表題番号:2023C-090 日付:2024/03/12
研究課題極低温冷却面におけるミスト化による着霜低減に関する実験的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 佐藤 哲也
研究成果概要
 本研究では、極低温伝熱面上での着霜に特有な現象である「ミスト化(空気中の水蒸気が伝熱面近傍の温度境界層内で凝縮・凝固し、微細な液滴や氷結晶となる現象)」に着目し、開発中の着霜シミュレータへの実装に向けたデータの獲得や新しい着霜低減法への応用を目指して、基礎的な実験調査を行った。伝熱面温度の低下に伴い、着霜の主要因が過冷却液滴の凍結、水蒸気の昇華凝結、ミストの沈着と変化するが、特に極低温域での着霜メカニズムは未解明であり、データも希少である。本研究で獲得した実験データは、極超音速航空機用プリクーラ(空気/液体水素熱交換器)や冷凍空調用熱交換器などの着霜予測や着霜低減の実現の基礎となり、学術的、工業的観点でも意義が大きい。以下に、成果をまとめる。
 実験は、保有する着霜風洞で実施した。精密空調機で温湿度を調整した空気を流し、風洞内の冷却平板上での着霜とミスト化を観察した。本研究では、霜質量の計測に加えて、霜の二次元形状やミスト層の高さの計測、霜の微細結晶の構造観察、熱電対を用いた温度境界層の温度計測を行った。非接触かつ連続的に計測可能な光切断法を応用した計測手法を考案し、霜の二次元形状やミスト層高さを精度0.15 mmの誤差で計測した。また、霜微細結晶の観察結果では、伝熱面上で位置や時間によって形成される霜結晶の構造が異なることを定量的に確認した。上記のほかにも、ミスト層の高さや温度境界層内の温度変化などが取得された。
さらに、新たな着霜低減法として、核生成との核となるエアロゾル粒子を空気中に混入して意図的にミスト化を促進する手法の検証も行った。エアロゾルの混入によって、昇華凝結での霜形成がわずかに遅延する様子が観察できたが、着霜量や霜厚さへのエアロゾル粒子の混入の影響は小さく、有意な着霜低減効果は確認できなかった。