表題番号:2023C-089 日付:2024/03/29
研究課題離散ディラック構造と離散ディラック力学系の構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 吉村 浩明
研究成果概要

拘束を受ける力学系のモデリングには,系の幾何学的構造に注目した上で,ラグランジュ形式やハミルトン形式での定式化を行うことが不可欠である.一方,天体や宇宙機の軌道計算,分子運動の計算においては,エネルギー保存則を満たしながら長時間に渡って安定かつ高精度な数値解析が求められる.このような視点から構造保存型の数値解法が注目されている.本研究では, Yoshimura and Marsden(2006)によって開発された時間連続系に対するラグランジュ・ディラック系の枠組みを離散系に拡張し,特に,ディラック構造を保存する数値解法の開発を行うことを目的として研究を実施した.まず,Yoshimura and Marsden(2006)のプログラムに従って,配位空間上のディストリビューションとして与えられる非ホロノミックな拘束を考え,余接バンドル上に誘導されたディラック構造とそれに付随するディラック力学系を定義する.これに対して,まず,配位空間の接バンドルを配位空間の直積空間で近似することで,接バンドルの離散化を行い,また,余接バンドル上の正準2形式と有限差分写像を用いて,離散正準2形式を定義した.その上で,離散ディストリビューションを導入して,ディラック構造に関する離散化手法を提案した.次に,ラグランジュ・ディラック力学系の離散化を行うために, Tulczykewtripleと呼ばれる高階のバンドル構造の離散化を行い,離散化されたTulczykewtripleの間に成立する離散正準変換を導入した.その離散バンドル構造の枠組みを用いて,離散ディラック力学系の定式化方法を提案できた.