表題番号:2023C-086 日付:2024/03/06
研究課題深層ニューラルネットワークを用いたCFRP積層板の疲労寿命予測手法の構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 細井 厚志
研究成果概要

繊維強化複合材料の破壊はマトリックスクラック,繊維破断,繊維/樹脂界面のはく離などの様々な要因によって引き起こされるため複雑である.デジタル画像相関(DIC)法は非破壊検査の1種であり,試験対象に付与されたスペクトルパターンから変位を計測する手法である.本研究ではDIC法を用いて短繊維複合材料(Short Fiber Reinforced plastics : SFRPs)の疲労試験中のひずみ分布画像を取得し,損傷の進展を確認した.また,ひずみ分布画像を用いて深層畳み込みニューラルネットワーク(Deep Convolutional Neural Network: DCNN)による疲労寿命を予測し,その精度評価を実施した.

DIC 法により取得されたひずみ分布画像から試験初期段階からひずみの極大値が複数個所確認され,破断サイクル比が 60%程度において破断部で最大ひずみが確認できた.また,ひずみ分布画像から試験片の3か所(標点間平均,中央部,破断部)のひずみ平均を算出し,剛性低下曲線を取得した.剛性低下曲線から破断部において剛性低下が顕著であることが確認でき,疲労試験中のひずみ分布画像は破断予測や疲労寿命予測に活用できることが確認された.また,疲労試験からDICを用いて取得されたひずみ分布画像を用いて,DCNN を用いた疲労寿命予測を実施した.本研究では DCNN の構造の一種である Xception を用いる.一般的な Xception は分類モデルであり,出力層が複数存在するが,本研究では出力層を1つに変更し回帰モデルとしている.また,各ひずみ分布画像に対して疲労寿命比(fatigue life ratio: flr)を定義した.4本の試験片のひずみ分布画像(511)DCNN 学習させ,他の1本のひずみ分布画像(173 )flrを予測した.また,Gradient-weighted Class Activation Mapping(GradCAM)を用いてDCNNの注目領域を可視化した.RMSE=20.7であり,予測精度は低かったが,試験初期段階において破断領域を注目していることが確認された.目視では flr=70 程度で破断位置が確認できたが,DCNN モデル及びGrad-CAMを用いることで,flr=20 程度で破断位置が予測できる可能性があることが示された.