表題番号:2023C-075 日付:2024/03/05
研究課題不動産法研究-不動産法概説の執筆のために
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 教授 新井 剛
研究成果概要

本研究は、不動産「所有権」・「利用権」・「担保権」を3本柱にしながら、関係する諸法令や諸制度を適切な箇所に盛り込むスタイルを採用した『不動産法概説』のテキストを完成させるために、不動産法を研究するものである。本年度は、不動産「所有権」を制限するものとして、⑴建物区分所有法、被災区分所有建物再建等特別措置法(被災マンション法)、マンション管理適正化法、マンション建替え円滑化法等のマンション法を研究するとともに、⑵所有者不明土地問題による制限として2021年民法・不動産登記法改正を検討し、さらに⑶相続土地国庫帰属法に関して考察した。

まず、⑴に関しては、①戦後のマンション増加によって、民法旧208条の一カ条のみではその法律関係を処理できないとして、1962年に区分所有法が制定されたこと(計37カ条)、②その約20年後、共用部分の変更や規約の設定・変更・廃止、建替えを区分所有者全員の合意によるとすること等が現実的でないとして、1983年に同法は大改正されたこと、③さらに約20年後、老朽化マンション等の建替えや大規模修繕が社会問題化したため、2002年に同法はさらに大改正されたこと、④それから約20年経った現在、マンション管理とその再生の円滑化を図って、その改正が法務省で検討されていること等を確認し整理した。区分所有法改正の歴史は、マンションの管理・修繕・復旧・建替え等に関して、民法の規制を漸次緩和し、民法の特則たる性格を強めていくものであったと総括できよう。

次に、⑵に関しては、特に所有者不明土地・建物管理命令、管理不全土地・建物管理命令、改正不動産登記法について、制度導入の背景とその内容を詳しく分析した。

さらに、⑶については、その制定の背景や内容を検討したが、実際には極めて使い勝手が悪く、早晩改正が必要になるであろうことを指摘しておきたい。