表題番号:2023C-059 日付:2024/03/29
研究課題健診政策の実証・定量評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 助教 及川 雅斗
研究成果概要
日本で2008年に導入された「特定健康診査・特定保健指導」(特定健診)の政策効果を、特定健診導入前の健診内容の地域差を利用したDID推定で評価した。日本では特定健診導入以前から健診が広く提供されていたが、健診内容は実施主体により異なっていた。特定健診の導入により、各主体の健診内容が一定程度標準化されることとなったため、特定健診導入による健診内容の変化には地域的異質性がある。そこで、健診内容が大幅に拡充された地域を処置群、それ以外の地域を対照群として、2群の住民の健康状態の変化を比較するDID推定を行った。分析には「患者調査」や「国民生活基礎調査」、「国民健康・栄養調査」(平成14年以前は、「国民栄養調査」)といった厚生労働省が所管する政府統計を用いた。分析の結果、処置群の自治体では、生活習慣病による外来患者数が確認され、加えて、生活習慣病にかかわる外来医療費が16.4%減少したことも確認された。また、生活習慣病に関連が強い脳卒中による入院患者数が減少したことが処置群で観察された。処置群では、個人の生活習慣の変化も確認され、この変化は生活習慣病の患者数減少を説明する一つの要因であるかもしれない。研究成果をまとめた論文は、国際学術誌へ投稿準備中である。