表題番号:2023C-045 日付:2024/04/04
研究課題味のヒエラルキー:近現代世界における食の嗜好の変化についての基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 准教授 佐藤 尚平
研究成果概要

  本研究のテーマは、近現代世界における食の嗜好の変化である。食の嗜好の変化については、ヒトの移動とモノの流通、冷凍保存など科学技術の発展という側面からこれまで説明が加えられてきた。他方で、こうしたハードな要因だけでは捉えきれない、よりソフトな側面も存在する。例えば日本では、移民の規模や歴史的な交流の深さに反して、フランス料理の方がブラジル料理やフィリピン料理よりも圧倒的に人気が高い。この乖離は、日本社会における文化ヒエラルキーに踏み込むことなく有効に説明できないだろう。


 本研究では、こうした食の嗜好における文化的な側面に光を当てることを試みた。調査を通じて、帝国主義と脱植民地化というキーワードが見えてきた。すなわち、食という日常の暮らしの中にあるものを、近現代における大きな政治・社会的な変化から読み解くことができるのではないかという方向性である。本研究では基礎的な調査を行ったが、今後はより具体的な研究状況のサーベイや、実証的な調査にも挑戦したい。また、オリエンタリズムという視点から説明を試みることの有用性についても将来的には検討したい。