表題番号:2023C-043
日付:2024/04/04
研究課題エジプト古王国時代の墓地形成・葬制に関する考古学的研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学学術院 文学部 | 講師 | 山崎 世理愛 |
- 研究成果概要
- 本研究では、エジプトの墓地遺跡での発掘調査を通して、古代エジプト古王国時代の非王族墓における埋葬習慣や葬送儀礼について考古学的な視点から追究することが目的であった。実際に2023年夏に調査をおこない、未盗掘を含む複数のシャフト墓を検出し詳細な記録をとったほか、別日程で出土遺物の整理作業もおこなった。マスタバとよばれる高位の人びとが埋葬された大型墓の前に列を成すようにシャフト墓が造営されており、当時の墓地形成の様子を伺うことができた。また、そのうち未盗掘で発見された1基の掘り下げを開始し、竪穴から出土する土器片1点1点の位置をトータルステーションで測量し記録していった。古王国時代には、シャフト墓の竪穴部に土器片を投げ入れる儀式がおこなわれたことは知られているが、具体的にどのようなプロセスを経て執行されたのかまでは解明されていない。その原因として、多くの場合土器片が出土したさいの詳細な記録を欠いている点が挙げられる。対して本研究では、出土する土器片の垂直分布と平面分布を細かに記録することで、実際の儀礼行為の復元へと近づくことができた。垂直分布からは土器片の廃棄における単位がすでに見えているほか、今後は出土した土器片の接合関係を追っていくことで、竪穴に土器を投げ入れたときの様子(たとえば、完形の土器が投げ入れられ竪穴内で割れたのか、あるいは竪穴の外で割ってから投げ入れられたのかなど)を解明できる可能性がある。このように、今後のさらなる発展も期待される研究成果を得ることができた。なお、今回の調査・研究成果は学内でおこなわれた国際ワークショップで発表したほか、調査概報に関しては英文で作成し可能な限り早く公開する予定である。