表題番号:2023C-036 日付:2024/02/21
研究課題社会的意思決定に関する質的資料と計量データの統合研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 竹村 和久
(連携研究者) 東京理科大学 教授 井出野尚
(連携研究者) 静岡県立大学 准教授 玉利祐樹
(連携研究者) 北海学園大学 講師 村上始
(連携研究者) 早稲田大学 助教 川杉桂太
研究成果概要

本研究は、個人や集団の状況、社会的要因、人格的特性が最悪の決定を引き起こす要因であるかを明らかにし、意思決定プロセスから回避する方法を探究するものである。私たちは、市民、組織の一員、または消費者として、最良の意思決定を望みながらも、時には自身の立場から望ましくない選択をすることがある。例えば、本来欲しくないものを買ってしまったり、健康や生命を危険にさらす行動をとったりすることがある。また、集団や組織でも、メンバーが本来望まない危険な決定をすることがある。災害対策が無駄だという理由で災害を引き起こす事例や、悲惨な戦争が勃発する事例もある。個人がアルコールやギャンブルに依存するなど、非合理的な選択をすることもある。このような意思決定は、一般に、多くの要因において最も望ましくない選択をすることと定義される。これらの非合理的な意思決定を理解する研究として、カーネマンやスミスによる2002年のノーベル経済学賞受賞研究や、セイラーらによる行動経済学的研究がある。しかしながら、これらの研究はしばしば期待効用理論や主観的期待効用理論からの逸脱を扱っているが、望ましくない意思決定を直接的には扱っていない。本研究では、最良ではない選択に焦点を当て、これまでの研究とは異なるアプローチを取る。これまで、認知心理学、社会心理学、臨床心理学、精神医学、行動経済学などの分野で、最悪の決定が報告されているが、その詳細な決定プロセスはまだ不明確である。本研究では、これらの知見を活用しつつ、実証的かつ理論的に根拠のある微視的な意思決定プロセスを明らかにするための方法論の構築を目指す。これには、数理的意思決定理論と、言語プロトコル法や情報モニタリング法などの過程分析技術の統合が含まれる。さらに、眼球運動解析や他の生理的指標などの多次元の時系列データの活用も考えられる。本研究では、量的な分析だけでなく、歴史的事例の文献研究や面談調査などによる質的な研究もった。本研究の結果は、国内外の学会誌、学会大会で発表された。