研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 法学学術院 大学院法務研究科 | 教授 | 松村 和徳 |
- 研究成果概要
本研究は、民事訴訟及び執行における第三者の地位に関するものである。民事訴訟は二当事者対立構造を基本とするが、第三者が訴訟に関与してくることがある。この局面でこれまで民事訴訟法学においては議論されてきたのは、主に(1)訴訟担当者として第三者が訴訟に関与する場合、(2)当事者間の訴訟に第三者が参加する又は引き込まれる場合、(3)訴訟の判決効が第三者に及ぶ場合、である。また、執行では、債務者の責任財産を対象として執行はなされるが、その実施された執行が第三者の財産又はその法的地位に影響を及ぼす場合がある。執行の局面では特に第三者異議訴訟が問題となった。
今回の申請における本研究では、前者の民事訴訟関係では(1)に研究対象を限定し、他方執行関係では債権的請求権に基づく第三者異議訴訟を研究対象にした。前者では、わが国の訴訟担当論は、正当な当事者の判断に当事者適格という独自の概念を用いた結果、一般には第三者への管理処分権(実体適格)の移転が訴訟担当を認めるメルクマールとなっており、その結果、実体適格と訴訟追行権の分離を前提とするドイツ法圏とは異なり、訴訟担当の理解に混同を招き、訴訟担当性の判断に議論の錯綜を生じさせていることを明らかにし、とくに、「遺言執行者の訴訟上の地位」について判例を中心とした研究を行った。その成果、同タイトルで判例時報社デジタルライブラリー「サブスク ロー・ジャーナル」において掲載されている。
他方、執行関係で債権的請求権に基づく第三者異議の訴えについてはそれを許容する必要があるが、本来的制度趣旨とは相いれないものであるため、その理論的正当化の問題がある。この問題を取り上げ、ドイツ法を中心に比較法的に検討し、実体法的側面と訴訟(執行)法的側面からの考察が必要である点を明らかにできた。今後は、具体的事案での考察を予定している。