表題番号:2023C-023 日付:2024/03/26
研究課題メタバース空間における知的財産法上の諸課題の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 大学院法務研究科 教授 上野 達弘
研究成果概要
 いわゆる「メタバース」と呼ばれるものは、より一般的に「仮想空間」として普及しつつあり、そのような中で、実に様々な知的財法上の課題が噴出している。近時は、生成AIが話題になっているために、仮想空間における法的課題に関心が向かなくなっているように見えるが、実は、依然として、重要な課題が山積している。
 そこで、この1年間は、特に、デザインの保護について、現実世界における知的財産権(著作権、意匠権など)が、仮想世界ではほとんど役に立たない事態を明らかにした上で、これに対して、どのような立法論・解釈論が望ましいかという点について検討を行った。
 その過程では、日本における意匠法が、現実世界における意匠を仮想空間において再現する行為にほとんど役に立たない現状が、必ずしも国際的に一般的ではないことを明らかにすることができた。この点、令和5年の不正競争防止法の改正によって一定の問題は解決するものの、しかしなお残された課題があることが明らかになった。
 そこで、研究結果としては、今一度、意匠法の改正を検討すべきことを論じるとともに、実用品のデザインに関する著作権保護について、最高裁判決がまだない中で、これを積極的に進めていくべきことを論じることに至っている。
 その成果として、2023年10月および12月には、「メタバースにおける知的財産法」をテーマとして2回の講演を行うとともに、2024年3月には、台北大学に招かれて、「実用品デザインの保護」に関する講演も行った。いずれも、大きな反響があり、諸外国の立法と比較した有意義な議論を行うことができた。